明るい時間特有の騒音が渦を巻き此方へ伝わる。密集した壁はモダーンな薄灰の影にて、無機質の密林を創る様である。 少し許りの休息欲しさに、私は広場の椅子に腰かけて、アフターヌーンの熱い珈琲をチミチミと啜り乍ら直ぐ傍の大道芸に目を遣って居た。 黒と云うのは然程には恐ろしくなく、果して、白というものの方が余ツ程不気味にも思得ると、大道芸人の異様に白い服を目で撫添り考える。その異様な彼が異様な長脚をコツンとかカロンとか鳴らす度に、カップの中の珈琲はジンワリと減っていく。 大道芸人は、時偶に来る歩行者等御構い無しに、グルリ、グルリ、グルリと広けた場所に渦を描く。アア、大道芸人に掻き混ぜられ、騒音も、グルリ、グルリと渦を巻くのである。 渦の中心に騒音が吸い込まれ、次には満足顔の大道芸人も見る見る内に吸い込まれ行く。静かな広場には、騒音の痕跡も無い。 珈琲を空にした私は、立ち眩みの歪んだ広場を歩き始めた。
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